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俺は腰に手を回した。

カチン

俺は引き金をはずした。



戦いの果てに



「いけ〜〜!!」

俺は勢い良く手に持っている手榴弾を投げた。



時は西暦20XX年
いつの時代も、人間の愚かさは変わることは無い。

戦争

この言葉が生み出すものは、憎しみだけ。
憎しみ以外、何も生み出しはしない。
生まれた憎しみは、大きく膨れ上がって再び争いとなり、人々に武器を持たせる。
どれぐらい……どれぐらい昔から、同じことを繰り返してきたのだろう。
戦争が起こるたびに、人々は自分達の行為を呪い、二度と起こさないと誓ってきた。
誓いとはなんだ?
それは決意であって、生半可なものであって良いのか?
だってそうだろう……
再び戦争が起きているのだから。



「ドーン」

いたるところから、その音が聞こえる。
俺はこの音が嫌いだ。
何もかも壊すだけで、人々に幸せを与えることができない音だから。
人々を幸せにできる音もあれば、不幸にすることしかできない音もある。
なんだかな……

「第一部隊はそのまま前進。第二部隊は後方からの敵の警戒に当たれ」

そう叫ぶ部隊長の声は、周りの爆音でほとんどかき消されていた。
耳を劈く爆音。此処は戦闘地区 第二エリア
その中に居る第一部隊の隊員8番が俺、穂村 流
一ヶ月前、徴兵によってこの戦地に向かわされた、幸薄い15歳だ。

「前方に敵確認。その距離50メートル」

隊員の一人がそう叫んだ。

「敵はなんだ?」

「待ってください。あ、あれは……WT-01型です!」

俺は自分の耳を疑った。
此処に来て間もない、戦争兵器にはほとんど知識の無い俺でも、その名前を知っている。
WT-01型 熱感知プログラム搭載の二足歩行型対人用ロボット。
まあ簡単に言えば、発熱体を感知すると攻撃を仕掛けてくる、厄介なロボットだ。
そんな恐ろしいロボットが、今まさに目の前に居るのだ。

「ばかな! あれは製作途中じゃなかったのか!?」

部隊長は動揺を隠しきれないでいるようだった。
無理も無い。俺があのロボットを見たのは半年前の休日のことだ。

その日、何もすることが無かった俺はテレビをつけてゴロゴロしていた。
面白い番組は無いかと目まぐるしく番組を変えていた。
そんなとき、あるニュース番組の映像が目に留まった。
それがこのWT-01型の映像だ。
確かそのときはまだ未完成で、少なくとも完成までにあと1年はかかるといっていたのだが・・・

そんな代物が目の前にあるのだから、動揺してもおかしくは無い。
俺はどうかって?
あいにく肝は据わっているほうだったので、そこまで動揺はしなかった。
もしかしたらその時興味を引かれたロボットを生で見ることができて、少々嬉しかったのかもしれない。
しかし、此処は戦場だ。
そんな生ぬるいことは言ってられない。
死ぬか生きるか……
そんな世界だ。

「仕方が無い。受け入れたくない現実だが、戦うしかない。各員戦闘準備!!」

部隊長の声が、かすかに耳に届いた。
俺は手に持っているF4レーザー銃を、強く握りなおした。

「死ぬなよ」

そう言ってきたのは、隣にいた柏木 隼人だった。
彼は俺と一緒の時期に此処に連れてこられた、よき親友であり、戦友である。

「当たり前だ。俺は生きて、帰る場所に帰らなければいけないからな」

そう、俺には帰る場所がある。
そこには柏木も居て、他の友達も居て、家族が居て。
とにかく、温かくて居心地のいい場所だ。
何が何でも帰ってやると、心に決めたんだ。
だから俺は死んでなんかいられない。

「突撃開始」

今度ははっきりと、叫び声が聞こえた。
こんな嫌な命令だけははっきり聞こえやがる……

「じゃあ、あとでな」

俺は柏木にそう言うと、第一部隊の面々とともに飛び出していった。



「よし、走りながら聞け」

そういったのは、部隊長だった。

「どんな機械でも、動力部分がある。だからあのロボットも動力部分を叩けば、何の変哲も無い鉄くずになるはずだ」

なるほど、たしかにそうだが……
それを行うのは容易ではない。
あのロボットを相手に、そんなことが可能なのだろうか。

「よってこの部隊を攻撃と援護の二つに分ける。攻撃を10番まで。そのほかは援護に回れ」

またもや耳を疑いたくなった。
自分は……隊員番号8番。思いっきり攻撃部隊のほうに入っている。
よほど神に見捨てられているらしい。
まあもともと神なんて信じてはいないが……

「よし。作戦開始」

こうなったらやるしかない。
俺は腹をくくって銃を構えた。
と、そのとき。

チュン

そんな音が耳元で聞こえたかと思うと、横に居た一人が倒れた。
どうやら敵に気づかれたらしい。

「ひるむな〜!そのまま突撃」

なんでかな……
横で人が一人死んだというのに、怖くはなかった。
もともと感情が欠けているのか、もう慣れてしまったからなのか。
それは分からない。
とにかくそんな自分は好きじゃなかった。
人の『死』に対して何も感じない自分が……

「何をしているのだ!!早く突撃せんか!」

俺は我に帰った。
そうだ、今は考えてる場合じゃない。
目の前に居るあの殺戮ロボットをどうするか、それが問題だ。
あいつを倒さない限り、俺たちに明日は無い。

「こうなったらあれを使うか」

俺は腰に手を回した。

カチン

俺は引き金をはずした。

「いっけ〜」

手に持っていた手榴弾を勢い良く投げつけた。
この手榴弾はそこらにある代物とは違う。
同じ大きさのものと比較すると、その破壊力は約3倍。
これなら楽勝に……

「ドーーン」

鼻につく火薬の匂い。
轟く爆音。
煙はもうもうと立ち込めて、視界がほとんど無いほどだった。

「派手にやりすぎたかな……」

目の前の光景を目にして、俺はそう思った。
しかし相手が相手だ。コレぐらいしないと。

少しづつ煙が晴れていく。
あいつはどうなった。
その疑問はすぐに解決した。



ドドドドドドドドドド

けたたましく鳴り響く、機関銃の音。部隊長の叫ぶ声。
俺は少しあっけに取られていた。
あの爆弾でも、機能停止までに至らないなんて。
少しはれてきた煙の中から、あいつが姿を現した。
確かに傷は負ってはいたが、片腕のレーザー兵器が吹っ飛んだだけ・・・。
とんでもない装甲だ。

俺は物陰に隠れた。
初めて怖いと思ったかもしれない。
この世にあるものなんて、何も怖くはない。
そう思っていた……。
しかしそれは違った。
思い返す約束の詞。
迫りくる、死という現実。
初めて俺は、生きているということ実感した。
両手があって、足で大地を踏みしめて、そうやって生きているんだ。
遅すぎた……
目の前のそれは、俺に恐怖を与えるには充分すぎるほどだった。
相変わらず鳴り響く、機関銃の音。隊員叫び声。
それぞれの思い。辛さ、悲しさ、痛さが交じり合うこの戦場で、何一つ感じないロボットが一体。

一人、また一人とやられていく戦友たち。
それを見ているだけの自分。
怖かった。怖いと思った。何もできなかった。
人が死ぬのには何も感じなかった自分。
自分が死ぬのはやっぱり怖い。
冗談抜きで、怖い。




第一部隊はついに自分ひとりだけとなっていた。
ガシャン ガシャン
一歩一歩近づいてくる足音。
それは死へのカウントダウン。
そう思えた。

「お前何やってんだ!!帰るんじゃなかったのか?それともはったりか?」

後ろで声がした。
聞きなれた、懐かしいような声。
振り向くと、そこには柏木が居た。

「な……お前は第二部隊じゃ……」

「ばーか、第一部隊がお前を残して全滅じゃあ、援護もクソもねぇよ」

全滅。耳が痛い・・・。
俺は何もしていない。
というよりも、何もできなかった。
しかし。
このまま指をくわえて見ているだけは嫌だ。
そう思うと、体が勝手に動いていた。

「何をする気だ!?」

俺にもよく分からなかった。
ただ、あいつを倒さないと死んでいった奴に示しがつかない。
そう思えた。

「や……やるだけやってみるさ」

俺はひとりで突っ込んでいった。
他人には無謀と言い放ったその行為と同じことを自分もしている。
しかし、もうこれしか残っていなかった。

ダダダダダダ

弾丸がこめかみをかする。

ズキュン

すかさず俺も反撃した。
焼け石に水程度だとは俺にもわかっている。
しかし、これしかできることが無い。

「うおぉ〜〜」

何発も、何発もビームを連射している。
少しずつでも傷はついているのだろうか。

ドン

右肩に激痛が走った。
弾が貫通したのだ。
気づいたら俺は地面に倒れていた。
痛さで視界がゆがんでいる。

死ぬ

そう覚悟した。
……が、どうやらあいつも玉切れらしい。
しかし俺は、あまりにも無力だ。
踏み潰されて終わるのだろう。





「穂村聞いてるか?」

俺は顔を上げた。
痛さのあまり、薄れ行く意識の中で。

「残念だが……お前との約束は果たせそうにねぇや」

そこには柏木の姿・・・。
WT-01型と俺の間に立っている。

「おい……どういう意味だよ」

俺は聞き返した。

「そういう意味だ。これ以上、お前と一緒には過ごしていけない」

何?
今なんていった。
あいつ、まさか……

「心残りは、約束を破ることだけど……お前なら分かってくれるはずだよな」

「おい、何言ってんだよ。ちょっと待てよ。そんなこと俺が許さないぞ」

必死にひねり出した言葉だったが、声にならなかった。
両の目からは一筋の涙。
人の死には何も感じなかったのではないのか。
柏木が死ぬ。
俺をかばって……
何でこんなに悲しいんだよ。
何で涙が出て来るんだよ。

「じゃあ、皆には宜しく……」

そして最後にこう聞こえた。

「元気でな」

辺りが光に包まれた。











あれから三年……

「なあ、柏木。今日はお前の誕生日だぜ」

ワインを持って、俺は墓の前に居た。
三年前のあの日、お前は俺をかばって死んだ。

トク トク トク トク トク

俺はワインを墓にかけた。
もうあれから三年……か。
俺にはお前のしたことが分からなかったよ。
自分を犠牲にしてまで、俺を助けてくれたお前の行為が。

ワインを半分ぐらいかけたところで、俺はかけるのを止めて、墓の横に置いた。

けど、今なら分かるよ。
大切な者を守ろうとした、お前のその行為が。

「ハッピーバースデイ、俺はもう行くよ」

くるっと振り返り、俺は歩き始めた。
次に来るのは、来年の今日だろう。

ガシャン

後ろで何かが割れる音がした。
俺は足を止めて、振り返らずにこう言った。

「おせーよ ば〜か……」

そう一言つぶやいて、再び俺は歩き始めた。

















fin







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